馬 鹿夫、電車に乗る。
TCT
地下鉄御堂筋線、なかもず駅。
馬
鹿夫(ウマ・シカオ)は、千里中央行きの列車の一両目に乗った。
馬 鹿夫、22才。鹿夫は、名前の通りの人物だった。
馬
鹿夫が電車に乗ると、そこにはつり革があった。
馬 鹿夫は、つり革を持った。
そして、体重をかけていった。
そしてついに、馬 鹿夫は浮き上がった。
鹿夫は、声を出した。
「わーい。ボクは今、空を飛んでるんだぁ〜。」
周りの乗客は、しらけているだけで、何も言ってこない。
そして、電車は動き出した。
馬
鹿夫は、相変わらずつり革にぶら下がっていた。
そこからは、運転席がよく見えた。
そこでは運転手が、難しい計器を見ながら、レバーを握っている。
馬 鹿夫は、こう思ったに違いない。
「・・・・・・ボクもやってみたいなぁ・・・・・・」
馬 鹿夫は、馬
鹿夫なので、そのまま運転席のドアを開け、その中に入って行った。
そして、こう言った。
「ボクにもやらして?」
もちろん、運転手は仰天した。
「おい! お前は何だ! ジャマだから出て行きなさい!」
しかし、馬 鹿夫はわがままだった。
「やりたいの!」
馬
鹿夫は、そう言うなり運転手を突き飛ばした。
そして、空になった運転席に座り、まずはブレーキ・レバーを引いてみた。
電車は、急停車した。
車内の多くの人々が転倒し、中には頭を打った人もいた。
運転手は、激怒した。
「おい! お前! なんてことをしてくれるんだ! この馬鹿!」
そう言うと、運転手は馬
鹿夫につかみかかった。
しかし、馬
鹿夫は、運転手を邪魔だと思い、再び突き飛ばした。
非力な運転手は、再び突き飛ばされた。
馬 鹿夫は、運転席の窓を開けた。
そして運転手をつかむと、そのまま窓の外へと突き落とした。
あわれにも運転手は、反対方向の列車にひかれ、死んでしまった。
邪魔者を処分した馬
鹿夫は、再び運転席に座ると、アクセル・レバーを握った。
そして、スピードを出し始めた。
スピードは一気に加速していく。
そして、ついに最高速度に達した。
・・・・そして、新金岡駅が見えた。
しかし、馬
鹿夫は、ブレーキをかけようなどとは考えていなかった。
そう、列車は、新金岡駅を通過した。
もちろん、新金岡で電車を待っていた人々は仰天した。
それらの人々は、時速100kmで通過していく電車の風圧に吹き飛ばされていった。中には、反対側ホームから線路に落ちた人もいた。
そんな人々に向かって、馬
鹿夫は、雅子さんのごとく手を振った。
そして、警笛を3・3・7拍子で鳴らしながら通過していった。
また、乗客もびっくりした。運転席に殴り込もうとした人もいたが、馬
鹿夫がカギをかけてしまったので、入れなかった。
そして気が付いた頃には、新金岡駅はもうとっくに視界の外へ飛び去っていた。
しばらくすると馬
鹿夫は、他のレバーもいじりたくなってきた。
そして、馬
鹿夫は隣にあるレバーを引いてみた。
ブレーキだった。
列車は、さっき以上の勢いで急停車し、その反動で、何人もの乗客が倒れた。中には、頭を打って血を流した人もいた。
しかし、馬 鹿夫は平気だった。
そして、馬
鹿夫は、別のレバーを引いてみた。
それは、扉を開けるレバーだった。
電車の扉が開き、ドアにもたれていた乗客は、車外に落下した。
そして、馬
鹿夫は再び、アクセル・レバーを握った。そして、再加速を始めた。扉を開けたまま、である。
安全装置は、故障していた。
そして電車は、あっという間に時速100kmとなり、その風で何人もの乗客が車外に吹き飛ばされた。
そして、北花田駅が見えた。
馬 鹿夫は、北花田駅も通過した。
新金岡駅同様、多くの人が死んだ。
しかし、北花田駅を通過したところで、馬
鹿夫の前に、大きな障害が立ちはだかった。
前方に、先の列車が見えたのである。
いつの間にか、追い付いていたのだ。
馬
鹿夫はブレーキをかけようとしたが、間に合わなかった。
そう、列車同士は衝突した。
その衝撃で、生き残っていた乗客のほとんどが死んだ。
しかし、「アホは風邪ひかない」という言葉もあれば、「馬鹿は怪我しない」という言葉もある。(作者註:実際はそんな言葉ありません)
そう、馬 鹿夫は、無事だった。
そして運良く、運転席の真横には、あびこ駅のホームがあった。
馬
鹿夫は、今頃、自分のしたことに気が付いた。
そして、馬
鹿夫は、素早く電車を降りると、逃げ出した。
馬
鹿夫は、まだ捕まっていない。
目撃者の多くは死んでいたし、そしてさらに・・・・
馬 鹿夫は、戸籍に登録されていなかった。
END
この小説の無断転載などを禁止します。
また、決して馬
鹿夫のマネをしないでください。(勝手に電車を運転すると、刑事罰を受けます。)
なお、本作品の主人公「馬 鹿夫」は、某ミュージシャンとは一切関係ありません。(いやまじで)