2人称小説
Last X’mas

TCT

(ご注意)

 この小説には、「あなた」を不快にする表現が、
 多数含まれております。
 もしも肌に合わないと感じられた場合は、
 すぐに閲覧を中止して下さい。

 時は師走の24日。
 巨大なクリスマスツリーの下で、
 多数の男女が、待ちぼうけていた。
 そんな中には、あなたの姿もあった。
「遅いなぁ・・・・・・」
 ついこんな言葉も漏れてしまう。
 しかし、待ち合わせの相手・・・あなたの恋人・・・は、来なかった。
 すでに待ち合わせの時間を20分以上超えているにもかかわらず、である。
 そして、周りで待ちぼうけていた他の人々は、どんどん相手を見つけて、夜の街へと旅立っていく。
 いつしか、待っているのは、あなた1人だけとなっていた。
 それでも待ち合わせの相手は、来ない。

 時は午前十時。
 すでに1時間が経過している。
 しかし恋人は、まだ来ない。
 何回もCallした。
 その自宅にも電話した。
 しかし、流れてきたのは、こんな無意味なアナウンス。
「おかけになった電話は、電波の届かないところにあるか、電源が入っていないため・・・・」
 自宅にかけても留守番電話。応対するのは録音されたアナウンスのみ。
「ふぅ・・・・・・」
 もしかしたら、あの人はもう、来ないのかもしれない。
 連絡が行き届いていなかった?
 もしかして場所、間違えた?
 あなたの脳裏に、数々の不安がつのる。
 しかし、それはいつしか、疑心暗鬼に変わっていく。
・・・・・・もしかしてアイツ、約束すっぽかした?
 考えたくないが、他の人とデートを楽しんでいるのかもしれない。
 そういえば最近、携帯のメモリーに、見慣れない名前があったような・・・・・・
「まさか・・・・・」
 自分は捨てられてしまったのだろうか?
 そんな考えすら、浮かんでくる。
 しかし、あなたは必死になって、その考えを打ち消そうとした。
・・・・いや、それは無い!
 まさか、あの人が、こんな事をするはずが無い。
 あんなに愛してるのに。あんなに愛されてたのに。
 そうだ、道が渋滞しているんだ。
 電車が事故ったのかもしれない。
 きっと、そうだ。
 そうに違いない。
 うん、事故だ。・・・・・って、事故?
 その時ふと、あなたの中に、嫌な考えが浮かんだ。
・・・・まさか、事故に遭って、意識不明の重体?
 もしかして、今、集中治療室にいるとか?
 ・・・・・・・・。
 あなたの中に、さらに悪い考えが浮かんでくる。
・・・・もしかして、変な輩に、からまれてるんじゃ・・・・
 暴漢に殴られ、打ちのめされる恋人の姿。
 あなたの脳裏に、よくない想像が駆けめぐる。
 そして、血まみれになった恋人の姿・・・・・・
・・・・・・イヤだ>
 あなたは、以前よりも必死に、その考えを打ち消そうとした。
 しかし、不安はつのるばかり。
 あなたが、いくらその考えを振り払おうとしても、どんどん嫌な考えが浮かんでくる。
・・・・・・午後十一時。
 もう、待ち合わせの時間から、2時間が経過していた。
 もう、周りに人はいない。
 待ち合わせ場所は、ここに間違いない。手帳を何回も見て確認した。
 携帯にも、何度もTELした。つながらなかったけど。
「・・・・・・帰ろう!」
 そうだ、こんなに待たせること自体、間違っている。
 これ以上、どこにあいつを待つ必要がある?
 恋人をこんなに待たすなんて、間違っている。
 もしも事故とかだったら、さらに待つ必要性は低くなる。
 来ない相手を待ってたって、どうしょうも無いのだ。

 あなたは、2時間もお世話になった、巨大なクリスマスツリーに一発ケリを入れると、その場を去ろうとした。
 その時!

・・・・・・・・ボコッ!!

 あなたの意識は、薄れていった。

朝売新聞 12月25日夕刊の記事より

残酷! 恋人を待たせた上に撲殺!

 24日未明、地元在住の○○さんが、鈍器のようなもので撲殺されているのが発見された。その傍らには、その恋人の浜崎アキラ容疑者が砲丸を持って立っており、警視庁は本郷アキラ容疑者を、殺人の容疑で緊急逮捕した。
 同容疑者は、呆れたことに、被害者の○○さんが待ち合わせ場所に来た当時から木の上に潜んでおり、○○さんの困る様子を観察していたという。なお、同容疑者は動機について、「最近恋人が冷たかった。もっと好きな人ができた」などと話している。

END。


この小説の無断転載を禁じます。
なお、この物語はフィクションです。

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